約 3,017,407 件
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/969.html
「そういえば、月ノ宮。最近の朝練はどうだ?ちゃんと付いて来られているか?」 「はい!界刺様や不動様のお手を煩わせるわけにはいきません!今まで体験したことの無いトレーニングの数々、とっても新鮮です!!」 「春咲チャン。それってな~に?」 「これですか?能力向上のための通信教材です。この前、159支部の皆と『根焼』という焼肉屋へ打ち上げに行った際に、店長から頂いたんです。 私の事情や格好を根掘り葉掘り聞いてきて、それに仕方無しに答えていたら突然プレゼントされたんです。実際に使ってみるとわかりやすくて、今では暇があればこれを。 これからは、風紀委員活動に充てていた時間を自分の能力向上のために費やそうと思って」 「・・・界刺さん。夏休みなのに制服って珍しいですね」 「真刺が、『風紀委員に目を付けられている以上、お前の目立つ服装は話にならん』ってしつこく言うもんだからさ。まぁ、しばらくはこれで我慢だね」 『シンボル』の面々が各々会話を繰り広げながら、街中を歩いて行く。目的はパトロールでは無く、『シンボル』の隠れメンバー形製流麗への贈り物を選定するためである。 「やっぱり、形製チャンへの贈り物って女の子に選んでもらった方がいいんじゃない?」 「それもそうだな。私達男性陣では、女性が何を欲しがっているのかというのがイマイチ理解し難いからな」 「そりゃいいな。んふっ、これでバカ形製が贈り物を気に入らなくても俺達のせいじゃ無くなるな」 「・・・界刺さん」 「・・・得世さん」 「・・・界刺様」 「えっ?何か、俺って変なこと言った?」 「「はぁ・・・」」 折角仮屋と不動が言葉を選んで女性陣に押し付けようとしたのに、界刺の一言で全部台無しである。 「へ、変じゃ無いですけど・・・相変わらずのぶっちゃけぶりですよね、得世さんって」 「・・・流麗に対しては、殊更酷くなる傾向がありますよね、界刺さんって」 「そんなんじゃあ、形製様が可愛そうですよ!!界刺様!!!」 「ぬおっ!?な、何か桜も涙簾ちゃんもサニーも、やけにアホ形製の肩を持つね」 「「「当たり前です」」」 女性陣の同時ツッコミにたじろぐ界刺。女心がイマイチわからない男の末路とは、悲惨なものである。 「・・・これは、得世さんに任せたら碌なことにならないよ、水楯さん!サニー!」 「・・・ここは、仮屋先輩の提案に乗って私達で流麗への贈り物を選んだ方がいいですね」 「私も賛成です!形製様への贈り物・・・何がいいですかね」 男性陣そっちのけで、形製への贈り物について議論し始める女性陣。その様を男性陣は見やった後に、 「こうなったら、形製への贈り物は水楯達に任せよう。私達は、本来の『シンボル』の活動であるパトロールへ向かうぞ!」 「そうだね。それがいいよぉ」 「・・・何か俺だけ酷いことを言われまくりな気が・・・」 「「自業自得」」 この場から離れることを決定する。不動が女性陣にパトロールへ向かうことを伝え、男性陣・女性陣は別々の行動を取ることとなった。 「(・・・何者?)」 ある地点で、苧環は気付いた。何者かが自分を尾行していることに。最高峰の『電撃使い』、レベル5である御坂美琴には及ばすとも、苧環もレベル4の『電撃使い』。 『電撃使い』の真骨頂。手数の多さ。苧環は、常盤台の学生を狙った誘拐等に対する日頃からの予防的措置として、 主に外出時において微弱な電磁波を(意識的に)周囲へ発していた。 その反射波を利用したレーダー、今回で言うと自分へ跳ね返ってくる反射波の間隔が先程から一定している物体がいるのだ。 自分が歩いているのにも関わらず一定の距離を保っているということは、それはすなわち自分を尾行している者が居るということ。 「(ストーカー?全く、こっちは色々立て込んでいるというのに!)」 苧環は、心中で毒吐く。今は、一刻も早く月ノ宮達を見付けなければならないというのに。日も沈み、街は人工的な光で彩られている。残された時間は少ない。 「(こうなったら・・・さっさとこのストーカーを潰すに限る!今私を尾行している奴を連れたまま、月ノ宮達の所へは行けない)」 苛立ちも手伝って、苧環は自分を尾けている人間を叩き潰すことを決意する。 明かりに満ちた街道から逸れ、光届かぬ路地裏へと足を向ける苧環。尾行者も同じく路地裏に入って来る。 「(もう少し行った先で、仕留めてやる!フッ、このモヤモヤをストーカー退治で晴らさせてもらうわ!!)」 苧環は、自分を尾けてくるストーカーを退治することに集中する。ここまで奥に入れば、派手に暴れても人目にはつかない。自分の実力に自信がある故の判断。 次の角を曲がった所で迎え撃つ。そう苧環は決断し、目前に迫った角を見る。そこから・・・ 「ここら辺は、スキルアウトがよく通る道だ。得世!仮屋!気を抜くな!」 「へいへ~い。つっても、俺の『光学装飾』で基本的には感知できるけど」 「オ~ケ~。でも、そろそろお腹が空いてきたなぁ・・・」 「!!?」 その角から現れたのは、界刺、不動、仮屋の3人。後方の尾行者に集中したために、前方への注意が散漫になっていた苧環は、3人の登場に意表を突かれる。 「んで、そこに居るのは・・・ゲッ!!き、君は・・・!!」 「む?お前は・・・確か常盤台の・・・」 「ん?だ~れ、この綺麗な娘?」 それは、3人も同じ。界刺だけは『光学装飾』で感知していたものの、サーモグラフィによるものだったので顔までは詳細に判別できておらず、こちらも意表を突かれる。 「か、界刺・・・得世・・・!!」 「確か・・・サニーの保護者の・・・苧環だったっけ?」 路地裏の一角で図らずも対峙することになった苧環と界刺。 「サニー?一体誰のことを言って・・・」 「誰って、君んトコの娘。月ノ宮向日葵って言った方が良かったか?」 「!!」 界刺の口から出た月ノ宮の名前。半ば予測していたことだが、苧環は確認のために問い質す。 「・・・月ノ宮はやっぱり『シンボル』に?」 「えっ?サニーなら、今理由があって別行動中だけど・・・えっ?もしかして、サニーって君に自分が『シンボル』へ入ったことを伝えていないの?」 「・・・!!」 予測は当った。月ノ宮は、今『シンボル』の一員として目の前の男と行動を共にしている。 ならば、もう1つ確かめなければならないことがある。 「・・・月ノ宮が『シンボル』に入った理由って何?」 「ん?え~と、何て言ったかな?確か・・・『憧れたんです。「シンボル」に。そして・・・界刺様に』だったっけ?」 「・・・月ノ宮が?・・・あなたを?」 言葉に詰まるのを何とか悟られないように、苧環は懸命に言葉を搾り出す。だが・・・ 「らしいね。後は・・・『この人と一緒なら、この人から学べたら、私はきっと成長できる』とも言ってたっけ?」 「ッッ!!!」 言葉が止まる。息が止まる。心臓さえ止まってしまったと錯覚する程の衝撃。苧環は、呆然としてしまう。 「・・・・・・・・・」 「サニーらしい理由なのかな?んふっ。保護者としては心配になるのは仕方無いか」 「ねぇ、不動。あの娘って誰?(ボソッ)」 「月ノ宮が常盤台で所属する派閥の長だ。以前、成瀬台に来たことがあってな。そこで知り合った(ボソッ)」 界刺達の言葉に、今の苧環は何の反応も示せない。頭が真っ白、放心状態なのだ。 「・・・お~い。俺の話、聞いてる?」 「・・・・・・界刺・・・得、世。わ、わた、私のか、代わり、に・・・つ、月ノ、宮につ、伝えて・・・も、もら、え・・ないか・・・し、ら?」 「・・・苧環?」 苧環のおかしな様子に、界刺も気付く。それは、苧環から放たれた次の言葉で決定的となる。何故なら・・・ 「あ、あなたは・・・私の派閥から卒業よ・・・。そ、そして・・・こ、こんな頼りない先輩で・・・ご、ごめんなさいって・・・伝えて頂戴・・・!!」 泣いていたから。涙を流しながら、界刺へ月ノ宮への言伝を頼む苧環。その泣き崩れように、界刺、不動、仮屋は驚愕する。 「お願いね・・・そ、それじゃあ!!!」 「チッ!!」 言うだけ言ってその場から離れようとする苧環の腕を、相対した界刺が掴む。 「は、離して!!」 「馬鹿言ってんじゃ無ぇ!!そんな泣き顔見せられて、おめおめと帰らせられるか!! そんなことを許したら、ますます『女心がわからない』って女性陣からガミガミ言われるっての!!」 「お、億ボルト単位の電撃を喰らわすわよ!!」 「そんじゃ、その前に・・・勘弁しろよ!!」 「グハッ!!」 電撃によって脅しを掛ける苧環に、界刺が不意打ち気味の膝蹴りを鳩尾に叩き込む。その一撃に、地面に倒れ込む苧環。 「ガハッ・・・ゴホッ・・・」 「ちったぁ落ち着いたか、苧環?ヒステリックになるのもいい加減にしろよ?前もそうだったけどさ」 膝を曲げ、苧環と同じ目線に自分の目線を合わせる界刺。それが、その余裕を見せ付ける態度が、苧環にとっては力の差を見せ付けられるかのようで。 「な、何であなたなのよ・・・!!」 「ん?どういう意味?」 自分が抱く苦しみを理解できない男に向かって、苧環は思いのままに言葉を放つ。 「わからないの!?月ノ宮はあなたを選んだのよ!!私じゃ無くてあなたを!!私を・・・頼りにならない私を見限ってあなたを選んだ!!」 「・・・何でそんなことが言えんの?」 「月ノ宮の言葉を聞いてわからないの!?月ノ宮はあなたに憧れてるのよ!!あなたと一緒に居れば自分は成長できるって言ってるのよ!! わ、わた、私じゃ無くて!!あなたと一緒に居ればって!!何よ・・・何なのよ・・・!! あなたは、一体何なのよ!!急に私の前に現れて!!私の大事な友達を奪い去って!!」 「・・・・・・」 涙は流れたまま、目は充血し切っていて、それでも眼光鋭く苧環は目の前の男に向かって吠える。 「何が『自分の力なら何でも解決できるなんて思ってるんじゃないだろうね?』よ・・・。何が『人間だからだよ』よ!! 結局あなたがしたことって、私から大事な友達を奪って、私との力の差を見せ付けて!!高い場所から私を見下ろしただけじゃない!! ハッ!その場所から見る風景は、さぞ気分がいいでしょうね!!強者であるあなたにとって・・・弱者を叩き潰すことはそんなに楽しいものなの!? 結局あなたは・・・グッ!?」 「・・・・・・」 苧環の激しい吐露が中断する。界刺に胸倉を掴まれたからだ。 「・・・・・・」 「・・・何よ?何とでも言えばいいじゃない?他人に“恐怖”を与えて、“恐怖”に怯えさせて、そんなのに屈した私を・・・笑ってみせなさいよ!!」 苧環は、界刺を睨み付ける。確かに、自分は界刺に敗北したのかもしれない。いや、敗北したのだろう。だが、それでも・・・ 「・・・それはさ、サニーが君に対して言ったことなの?」 「えっ・・・?」 男は少女に問う。それは、いの一番に確認しなければならない人間が言ったことなのかと。 「・・・その様子だと、君はサニーに何の確認もしていないんだな。何で彼女が『シンボル』に入ったのか。その理由“全て”を、今の君は知らない。そうだね?」 「理由・・・“全て”・・・?」 『あの時・・・私はこう思いました。「この人と一緒なら、この人から学べたら、私はきっと成長できる」って。 何時も苧環様に守られてばかりの私でも・・・誰かを守れるようになれるんじゃないかって』 界刺は思い出す。あの公園のベンチで、月ノ宮が自分へ言った『シンボル』に入る理由を。 「・・・君は臆病なんだな」 「!!」 苧環は瞠目する。界刺の言葉が、自分の世界(こころ)に深く突き刺さる。 「そんなことは俺に聞くんじゃ無くて、最初からサニーに聞くべきだったんだ。それか、俺の言葉を聞いたとしても、その後にサニーへもう一度確認しなきゃいけないんだよ。 俺がさ、サニーの全てをわかっているとでも思ってんの、君?」 「そ、それは・・・」 「ヒステリックに喚き散らすのは勝手だけどね、やることやってから喚けよ。何でサニーから目を逸らしてんの?何で君はサニーから逃げてんの?」 「わ、私は逃げてなんか・・・」 「だったら、何でこんな所に来る前にサニーに確認しなかった!?同じ学生寮に住んでいるんだろう? サニーに問い質す暇なんか、幾らでもあった筈だ!でも、君は確認しなかった。何故か?」 界刺が、苧環の胸倉を自分の顔に引き寄せる。互いの息が掛かる程の位置で、界刺は怒りを込めた言葉を放つ。 「・・・恐かったんだろう?もし、サニーに真正面から自分を否定されたら自分は絶対に立ち直れない。そう心の何処かで思ってたんだろう? 君は、俺の“恐怖”に怯えていたんじゃ無い。『自分が否定される』という、自分自身が生み出した“恐怖”に怯えていたんだよ」 「!!!」 目の前の男から聞いた月ノ宮の言葉と同じくらいの衝撃を、苧環は感じた。頭がクラクラする程に、その衝撃は苧環の頭を、体を、心を巡り巡って行く。 界刺は、苧環の胸倉を掴んでいた手を放す。力無く項垂れる苧環。そして、地べたに胡坐をかく界刺は話を続ける。 「まぁ、その件はサニーに任せるとして。・・・俺はあの時こうも言った筈だよ? 『人間の暴力ってのはいずれ世界に潰されるもんだよ。世界の一部・・・そう、人間の手によってね』って」 「せ、世界・・・?」 「そう。だから、君が言う『快楽欲しさに強者が弱者を叩き潰す』場合、その強者は世界によって潰される。 つまりだ、君の言う通りの俺だったら・・・俺は世界に潰される。よかったね、苧環。いずれ俺は世界に叩き潰される」 「・・・!!」 この男は何を言っている?自分が潰されることを、どうしてこうも平然として受け入れられるのだ?この男・・・もしかして・・・ 「まぁ、俺もできるだけ世界を敵に回さないように気を配っているつもりだけど・・・。 もしかしたら、どっかで敵に回してんのかなぁ?・・・だから、絶賛女難中だったりして?あ~嫌だ嫌だ」 「・・・・・・馬鹿じゃない?」 「ん?」 苧環は、ほとほと呆れていた。意味不明。理解不能。この男を評するのならば、これ等の言葉がピッタリだと思ってしまう程だ。自分の理解できる範疇を超えている。 「あなたって、本当に馬鹿。前も思ったけど・・・今度こそ思い知ったわ。馬鹿も馬鹿。こんな馬鹿を理解しようだなんて思ったことが間違いだった。 フフッ。そうなると、そんな馬鹿で間違いだらけの行動を取っていた私は、あなた以上の・・・極め付きの大馬鹿ね。これで常盤台生だって言うんだから、呆れてしまうわ」 「・・・何か馬鹿のバーゲンセールだね」 「そうね。本当にその通り。・・・ねぇ。1つだけ聞いていい?」 「ん?何?」 馬鹿で間違いだらけの行動。そう断じた苧環が、それでも尋ねる。この理解不能で意味不明な男なら・・・わかるかもしれないと思ってしまったから。 「あなたって、“壁”にぶつかったことってある?もちろん、ここで言う“壁”は物体としての“壁”じゃ無いわよ?」 「・・・それなりには」 「・・・その時、あなたはどうやって“壁”を乗り越えたの?」 「・・・君はどうなのさ?乗り越えた経験は?」 「・・・・・・私は、結構前に1つだけ乗り越えたんだけど、また“壁”が幾つも立ちはだかってるの。どれも頑強そうな物ばかり。 あなたの言葉を借りるわけじゃ無いけど・・・本当に嫌になるわ」 苧環は、脳裏に学園都市第三位のレベル5である御坂美琴を思い浮かべる。かつて、『常盤台最高の電撃使い』の称号を賭けて挑んだもののあえなく惨敗。 上には上がいる。それを苧環は嫌と言う程思い知らされた。当時は、他の常盤台生にも無残に散った敗北者として陰口を叩かれた。周囲の冷たい視線に怯える毎日。 文字通り失意のどん底に突き落とされたそんな時、常盤台女子寮に近い女子中学校に勤務するある教師が苧環にある言葉を投げ掛けた。 『御坂は、元はレベル1で努力を重ねてレベル5になった。苧環、お前はこんな所で立ち止まったままか?失意の底無し沼に沈んで行くだけか? お前の目は何のためにある?お前の耳は、鼻は、口は、頭は、手は、足は、体は、能力は!? お前がお前自身の力で、自分だけの道を切り開いて行くためにあるんじゃないのか!?』 苧環にとっては、頬を引っ叩かれたと思うくらいの力のある言葉だった。 それ以降苧環は考えを改め、今では1人の『電撃使い』として御坂美琴を越える日々を夢見て、 日々能力向上に努めている。 今では周囲の評価も回復し、自ら派閥を形成するまでに至った。 そんな自分だけの道に、再び立ちはだかった何枚もの“壁”。その頑強な存在に弱音を吐いてしまう苧環へ、界刺は自身の経験を元にした意見を述べる。 「そうだねぇ。俺の場合は・・・『世界に嫌われないように努める』・・・かな?」 「・・・それが意味不明なんだけど」 「伝わらない?それじゃあ・・・こう言えばわかるかな?『いわれなき暴力を振るわない強者で居ること』。これならどう?」 「『いわれなき暴力を振るわない強者』?・・・駄目だわ、よく理解できない。理由があろうと無かろうと、強者が暴力を振るっていることには違いないわよね、それって?」 「君・・・本当に頭いいの?もしかして、とびっきりの馬鹿なんじゃないの?君の言葉を借りるわけじゃ無いけど・・・本当に常盤台生?」 「・・・あなたに言われたらお終いね」 苧環は、顔を手で覆う。この男に馬鹿と言われたらお終いだ。話にならない。絶望だ。ある意味、月ノ宮に否定されるのと同レベルで立ち直れないかもしれない。 「それじゃあ、今ここで例を示してあげようか?」 「えっ?」 「最近なんかツイてないし、こりゃあ少しは世界の機嫌を取っておかないと。偶には進んで『シンボル』のお仕事を頑張ってみようかな。よいしょっと」 言葉の意味がわかっていない苧環を無視し、界刺は地面に落ちているショルダーバッグの手を差し向ける。 シュッ! 微かに聞こえた何かが焼き切れる音。苧環は気付かず、界刺だけが『光学装飾』で気付いていたそれは・・・“糸”。 「あ、あなた・・・」 「真刺!仮屋様!苧環をサニーの所まで案内してあげて。俺は、ちょっくら仕事に励んでからそっちへ行くよ。『これ』は、涙簾ちゃん達には内緒な!!」 「得世・・・。っ!!」 「界刺クン・・・。ッ!!」 「・・・ハッ!ま、まさか・・・」 苧環は気付いた。自分が今まで失念していたこと。自分を尾行する者の存在。それに、界刺は気付いていたのだ。 「あ、あなた1人に任せるなんてできない!私も残る!!」 「ここまで来て我儘は止めて頂戴。こいつは・・・君には無理だ。手に負える相手じゃ無い。君みたいな・・・レベルが高いだけでどうにかなるような奴じゃ無い。 感じない?この尋常じゃ無い殺気をさ。よくもまぁ、こんなのを隠し切れるもんだぜ」 「えっ・・・?殺気?」 苧環は、その時になって界刺が緊張していることを理解した。目を逸らせば、同行者である不動や仮屋の冷や汗をかいている姿が目に入った。 「真刺・・・仮屋様・・・頼む!!」 「得世・・・必ず生きて私達の元へ来い!!いいな!?」 「し、死んじゃダメだよ!?界刺クン!!」 「あぁ。わかってるって。そこまで世界の機嫌を損ねた覚えは無ぇよ!!人間死ぬ時はあっけなく死ぬっつったって、自分から死にに行くつもりは無いしな!! それに、あのバカ形製に贈り物を届けられなかったら、死後の世界ってヤツにまで『分身人形』を飛ばして洗脳した上で、 俺を現世へ復活させて罰ゲームを押し付けるに決まってる!!そんなのは、絶対に嫌だっつーの!!」 界刺、不動、仮屋の会話を聞いて、苧環はようやく悟る。今自分達が居るのは・・・戦場。自分が参加するのには不適格と断じられた、命懸けが当たり前の場所。 「苧環!」 「・・・わかった。わかったわ。・・・あなたの言う通りにする」 苧環は立ち上がる。この戦場から逃げるために。自分が居ていい場所じゃ無いから。自分には、そこに足を踏み入れる資格さえ無いのだから。 「苧環!」 「だからわかってるって言って・・・」 「『いわれなき暴力を振るわない強者で居ること』!!」 「!?」 界刺は、この戦場における苧環への最後の言葉を高らかに響かせる。 「俺がこれから相手をするのは、たぶん『いわれなき暴力を振るう強者』。その中でも、きっと上位に位置する人間だ! だから、俺が生きて君の所へ行けば・・・『いわれなき暴力を振るわない強者で居ること』の証明になる筈だ!! か弱い君を護るために、強い俺が理由ある暴力を振るう!!わかった!?」 「!!あ、あなた・・・こんな時に何を・・・」 「こんな時だからこそだ!!苧環!世界ってヤツは、頑張ったり意地を見せた奴には微笑んでくれるぜ!? “壁”なんてのは、世界から俺達に贈られた愚痴(プレゼント)みたいなもんだ!その愚痴(プレゼント)をどう捉えるのかは、受け取った奴次第だ!! だから、俺は世界のヤツに対してこういうお礼を言ってやるよ。『いわれなき暴力を振るわない強者で居てやるから、ちったぁ愚痴を零すのを控えろ』ってな!!」 「あ、あなた・・・キャッ!!」 「じっとしててね!行くよ、2人共!!」 何かを言い掛けた苧環を、不動を左手に抱えた仮屋がその右手で抱える。『念動飛翔』による飛行は搭乗者1名に限られるため、 今は、地上に置ける運用―曰く「どすこいモード」―による高速移動にてその場から去って行く。 「・・・そろそろ出て来いよ?」 『光学装飾』によって、不動達がこの場から離れて行くことを確認した界刺は、路地の一角に身を潜める人間に声を掛ける。 「・・・・・・」 その声に促され暗闇から姿を現したのは、火の付いた煙草を口に咥え、戦慄する程の殺気を撒き散らす長身の男。傭兵ウェイン・メディスン。 だが、界刺とは視線を合わさない。人と対峙しているのにも関わらず視線を地面に彷徨わせている様は、薄気味悪いを通り越して怖気が走る。 着ている漆黒のコートが暗闇に溶け込んでいるように感じられるのは、その男からも『闇』の気質を感じられるからか。 「アンタ・・・何者だ?苧環に何か用でもあったのかよ?」 界刺は、全神経を目の前の男に集中する。常時携帯している警棒を何時でも手に取れるように身構える。 「・・・いや。あの女に特に用があったわけでは無い」 初めてウェインが喋る。その言葉はどこか陰気臭く、気だるげで、それでいて凄まじい程の殺意を帯びていた。 「だが・・・これはこれで悪くない。貴様からは、何処となく俺と似通った“匂い”がする。ククッ、少しは楽しめそうだ」 ウェインは、ポケットにしまっていた左手を外界に晒す。指がポキポキと嫌な音を奏でる。 対して、右手は口に咥えた煙草に掴むために上がっていく。程無くして、口から右手へと煙草が移る。 最後に、地面に彷徨わせていた視線を上げる。その濁った瞳は、今尚界刺を見ていない。それは視線の遥か先、虚空の彼方にある“何か”を凝視しているかのようだった。 「さて、世界の理はこの殺し合いに何を齎すのか・・・行くぞ・・・!!」 ウェインの右手から煙草が零れ落ちて行く。それは・・・『光』と『闇』が交錯する最初の刹那ー!! continue…? 両者の戦闘については―幕間―とある男子高校生と傭兵へ
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/805.html
「え?速見先輩が警備員の取り締まりを受けているってどういうことですか、椎倉先輩!?」 今日は3日間に渡るテスト期間の1日目。テストは午前中に終わるため一般生徒はそのまま下校する。 かくいう風紀委員も本来は下校してもよいのだが、成瀬台風紀委員支部では支部員は学内に居残るのが通例となっている。 風紀委員の仕事をするも由、支部内でテスト勉強をするのも由という具合である。 「さあな。俺も詳しいことは知らない。何でも一般人への傷害容疑の参考人として取り締りを受けているそうだ」 「あの速見先輩が・・・。“速見スパイラル”・・・ついにやっちゃったんすかね?」 「馬鹿言え、押花!!あの人が、速見先輩がそんなことをするわけないだろ!! 今までだって“速見スパイラル”の暴走で自爆することはあっても、 “速見スパイラル”の暴走で自分ごとスキルアウトを川に吹っ飛ばしたことはあっても、 “速見スパイラル”で一般人を傷付けたことは一度も無いんだぞ!!」 「初瀬君・・・それ、フォローになってないよ」 その初日にある問題が発生していた。 それは、成瀬台高校の風紀委員速見翔が一般人への傷害容疑で警備員に取り締まりを受ける事態が発生したのだ。 普通なら支部内でテスト勉強の1つでもするのだが、今はそれどころでは無い。他の風紀委員が集まって今後について協議しているのだ。 「とりあえず、寒村が速見の所に行っている。とりあえずはその報告待ちだな」 「大丈夫だよ初瀬君。速見君が一般人にケガを負わせるような人間じゃ無いことくらい、皆わかってるさ。」 「・・・はい。大声をあげてすみませんでした」 勇路映護のフォローもあって初瀬恭治は幾分落ち着きを取り戻した。 その時椎倉撚鴃の携帯電話が鳴った。椎倉は立ち上がり支部の隅っこへ移動、通話を始める。静まり返る支部内の空気。そして・・・ 「寒村からだ。とりあえず速見は釈放・・・というか嫌疑不十分で解放されたようだ。 今から寒村と一緒に支部に帰ってくる。詳しいことは帰ってから話すだそうだ」 「あ~よかった。やっぱそうっすよね。速見先輩がそんな大それたことするわけないっすよね」 「調子いいな・・・お前」 同じ1年生である押花熊蜂の発言の変わりように呆れる初瀬だったが、ホッとしたのは紛れも無い事実だ。 支部内にも安堵の空気が広がる。その空気を切り裂くように椎倉が、 「しかしまあ・・・テスト期間中にってのがタイミング悪いよな・・・いや、テスト前からか? 初瀬!確かお前がこの前出してきた報告書・・・ありゃどういう内容だった?」 「この前のですか?あれは・・・校内で起きた2年生の制服が盗まれた事件です。 体育の授業中を狙った外部の犯行だと推測していますけど、まだ犯人を突き止めるまでは・・・」 「ウチの高校ってボロっちいもんな。監視カメラの1つも無いし。・・・そういえば1年生の間だけっすけど、 最近教科書が破られた被害とか複数出ているっす。自分もまだ犯人に関する情報は見つけられていないっすけど」 「・・・最近になってだけど、ある3年生の靴の中に画鋲が入っていたと聞いたことがあるな。 一応気にはしていたけどイタズラ程度だし、しばらくは様子を見ると判断してたから懸案事項には上げていなかったな」 「初瀬、押花、勇路。その被害を被っている生徒・・・もしかして不良連中か?」 「!!・・・ええ」 「そう、その通りっす」 「僕の知っている限りではその認識で合っているよ」 「やっぱな・・・。ふむ・・・」 椎倉は思案に耽り始めた。初瀬はたまらず質問する。 「椎倉先輩・・・まさか、繋がっていると?」 「確証は無えがな。だか、可能性としては十分に有り得る。ただでさえ、ウチの高校は一部の不良共のせいで評判が悪い。 その不良共も最近は落ち着いてきていたんだが、今回の被害はその不良共を中心に出ている。 今はテスト期間だから不良共も表立って暴れちゃいねえが、テストが終わったら・・・」 「ヤバイっすね、それ。校内外に渡って」 「でも、それじゃあ、何故速見先輩が狙われるんですか?速見先輩は不良でも何でも無い・・・」 「ターゲットは不良だけじゃねえってことさ。不良共が暴れだしたらそれを抑える役目は俺達風紀委員だ。 犯人の野郎はこのテスト期間中に風紀委員を狙って機能不全状態に追い込むつもりなんだろう。 そしてテスト終了後、俺達が自陣内の問題に掛かりきりになってる間に不良共が『自発的』に暴れて問題を起こし、 それによって校内外の治安やイメージを悪化させるのが狙いなんだろう。 不良共が暴れる理由は何だっていい。『ウサ晴らし』とかでもな。暴れちまったらそこでシメーだ。 手口自体は荒っぽいが、今回のホシが仕掛けつつある『爆弾』はそれなりに効果がありそうだな」 椎倉の推論が必ずしも正解では無いかもしれない。しかし、現実としてそのような事態が 起こり得る可能性が十分に考えられる。その一歩手前にいる状態なのを支部内にいる風紀委員全員が認識する。 「とりあえず寒村と速見の帰り待ちだな。今日は外に出ず事務作業を中心に行動する。何ならテスト勉強してもいいぜ」 椎倉から当面の方針を指示される。その的確な指示が初瀬の心理状態を落ち着かせる。押花も勇路も自分の席に戻っていく。そして・・・ 「あああああ!!!忘れてた!!!」 「うおっ、何だ初瀬。急に大声を出して。びっくりさせんじゃねえよ」 急に大声を出した初瀬に椎倉がツッコミを入れる。 「すみません椎倉先輩!俺、今日は帰らせて頂きます!!」 「は?何で?」 「俺の大事な!大事な!!大事な!!!このスマートフォンが調子悪いんですよおおぉぉ!!」 「そんなん知るか!!」 「早く・・・早くケータイショップに行って診て貰わないと!!もし故障だったら新しい機種に交換してもらわないと!!!」 「ってか、お前の能力ならスマートフォンの状態くらいわかるんじゃねえのか?」 「演算に全然集中できないんです!!あああ!!今日のテストも全く集中できなかったし・・・どうしようどうしよう!!」 「(チッ、初瀬のスマートフォン依存症はホント厄介だな。だが、このままだと使いモンにならねえしな)」 初瀬恭治という男はスマートフォン依存症である。よって、スマートフォンに何かあった途端に激しく動揺してしまう。 目の前のテストや己の能力『阻害情報』の演算に全く集中できなくなる程に。 そんな初瀬の醜態を十二分に理解している椎倉は仕方無く、 「あー、わかったわかった。さっさとショップでもどこにでも行ってこい。 但し、そこでの用事を済ませたら寄り道せずに真っ直ぐ家に帰れ。いいな?」 「わかりました!!ありがとうございます!!では失礼します!!!」 そう言い残して初瀬はすっ飛んで行った。それから数十分後、 「寒村、只今支部に帰還したぞ!!」 「警備員の人、すごく恐かったよ~」 「あ、寒村先輩!速見先輩!」 寒村赤燈と速見翔が支部に帰ってきた。何時もは元気が有り余っている速見もさすがに疲れ果てているようだった。 「お疲れ様、寒村。速見君も災難だったね。はいお茶」 「いや、我輩に掛かればこれしきのこと、何ら問題無い」 「勇路先輩~ありがとうございます~」 勇路が出したお茶を啜る寒村と速見。そこに椎倉が声を掛ける。 「お疲れの所悪いが、こっちも聞きたいことが結構ある。ああ、飲みながらでいいからよ、聞かせてくれ。何があった速見?」 「それが僕にもよくわからないんです。今日からテスト期間に入るから何時もより早く登校しようと 6時に家を出て、何時も通りに“速見スパイラル”で登校していたらいきなり警備員の人に職務質問されて、そのまま・・・ はぁ、今日のテスト受けられなかったなあ・・・追試とかあるのかなあ?」 「そこから先は我輩が説明しよう」 「寒村?」 「どうやら最近他校生を狙って傷害事件が起きているようだ。その犯人は未だ捕まっておらんがな。 問題はその犯人が我等成瀬台高校の制服を着ていること、そして去り際に“速見スパイラル”と言い残して去っていること」 「寒村先輩・・・それって」 「ああ、速見の仕業にするつもりなのは明白。何とも狡い輩よ。この寒村直々に成敗してくれるわ!!」 「成瀬台の制服・・・。椎倉・・・これは」 「ああ、どうやら“当たり”のようだな」 初瀬はケータイショップにいた。やはりスマートフォンは故障していたようで、 今はどの色の機種にしようか悩んでいる所である。 「(やっぱり前と同じように黒色が・・・いやいや、折角変えるんだからここは明るい色を)」 悩み続ける初瀬。店員も顔には出さないがイラつき始めたその時、 「苧環様・・・本当にいいんですか?私なんかに付き合ってくれなくても」 「別にいいのよ月ノ宮。丁度私も携帯を変更しようと思っていた所だし。偶には派閥の長らしい所を魅せないと、ね」 「苧環様・・・ありがとうございます!!」 常盤台中学の制服を着た2人の少女が初瀬の前に現れたのだった。 continue!!
https://w.atwiki.jp/finalfantasyxiii/pages/2.html
ABOUT STORY 二つの世界 ルシ ファルシ CHARACTER ライトニング スノウ セラ ヴァニラ サッズ ホープ ファング 騎兵隊 PSICOM SUMMON シヴァ オーディン ヘカトンケイル バハムート アレキサンダー ブリュンヒルデ イフリート カーバンクル セイレーン エクスデス MONSTER 軍用モンスター、兵士 コクーンのモンスター パルスのモンスター シ骸 ボス CHART 序盤 中盤 終盤 OTHERS 最強武器一覧 バトルシステム ロール オプティマ 用語集 ミッション 裏技・小技 Q&A COMMUNICATE ネタバレ有 したらばスレ(否定派) 編集画面
https://w.atwiki.jp/magicschool/pages/145.html
【杉崎のとある一日】 06:45 ノクターンに起こされる。 06:50 ノクターンの作った朝食をゆっくり食べる。 07:20 必要な荷物を魔方陣につっこむ。 07:40 手ぶらで教室に向かう。荷物はすべて魔方陣内。 08:00 教室に到着。読書を開始する。 08:20 四天王三人がちょっかいを出してきたため、適当にあしらう。 12:40 午前の授業をほとんど寝て終了。弁当を持って食堂へ向かう。 12:50 テーブルひとつを占領して食事をしている蘇芳を発見。となりで弁当を食べる。 13:00 ふたり同時に食事完了。ちょっと駄弁る。 13:15 蘇芳と別れ、教室に向かう。 13:25 午後の授業開始。再び寝る。 14:25 実戦の授業スタート。四天王三人をボッコボコにする。 15:15 ストレス発散完了。すっきりして教室に帰る。 15:40 教室掃除完了。訓練場に向かう。 15:50 適当に訓練開始。戦闘用や他の魔術もいろいろ訓練。 16:50 訓練終了。寮に帰る。 17:00 部屋に到着。ファミリー全員に出迎えられる。 18:00 ファミリーたちとお菓子を食べながら談笑。 19:00 夕食完成。いただきます。 19:30 食事終了。ごちそうさま。 20:00 ファミリーを何名かつれて散歩。そうだ、ミギニー先生んとこ行こう。 20:30 幻獣学室到着。ミギニー先生と適当に話をする。 21:30 幻獣学室を後にし、訓練場に向かう。 21:50 訓練場に到着。蘇芳を見つけ、一緒に訓練する。 22:30 訓練を終了する。ついでにお話。 23:00 部屋到着。お風呂にIN。 23:20 明日の準備と宿題を開始。10分で終わらせる。 23:45 寝る。おやすみなさい。 【蘇芳のとある一日】 06:30 ジリジリ鳴っている目覚ましを叩いて止める。が、二度寝。 07:00 なんとか起きる。だるんだるん。 07:20 いろいろと身支度を終わらせ、朝食を食べる。目玉焼きとお味噌汁、ご飯を三人前。 08:00 戸締り確認、部屋を出て教室に向かう。 08:20 教室到着。クラスの女生徒とお話をする。 12:40 午前の授業終了直後、急いで食堂に向かう。 12:41 食堂一番乗り。食券を手当たり次第に、五千円分くらい買いまくる。 12:50 食事開始。丁度杉崎もやってきたので一緒に食べる。 13:00 食事完了。杉崎と駄弁る。 13:15 杉崎と別れ、教室に向かう。 13:25 午後の授業開始。真面目に受ける。寝たりはしない。 13:50 授業中。お腹が鳴ってしまい、先生に注意されてしまう。 14:20 持ってきたおやつ、おにぎり五つを食べる。 15:40 教室掃除終了。寮に帰る。 16:00 寮に到着。荷物を置いてシャワーを浴びる。 16:20 放課後ティータイム。音楽を掛けながら紅茶とクッキーをいただく。 17:00 とある生徒から注文のあったアクセサリーを作り始める。 18:30 アクセサリー完成、術式を組み込む。 19:00 術式組み込み完了。ゴーレムに生徒の所へ届けてもらう。 19:10 夕食を食べに食堂へ向かう。実は料理するのは好きじゃない。 19:30 食堂に到着。蘇芳限定、裏デカ盛りメニューを注文。 19:50 超巨大なカツカレーを食べ始める。周囲には人だかりが出来ている。 20:00 カレー完食。周囲からは歓声が沸き起こる。 20:10 デザートに巨大パフェを食べる。観客がどよめく。 20:30 購買に向かい、お菓子を袋いっぱいに買う。 21:00 お菓子を食べ歩きながら訓練場に向かう。 21:20 訓練所到着。アーチェリー開始。 21:50 杉崎がやって来た。一緒に訓練開始。 22:30 訓練終了。お菓子を食べながら談笑。 23:00 部屋に帰ってくる。お風呂に入る。 23:30 お風呂上りに牛乳を飲んで寝る。 【ミギニーのとある一日】 05:45 幻獣学準備室にて起床。朝から変な生物がうるさい。 06:00 幻獣やキメラなどに食事を与え、檻の掃除をしたりする。 06:30 自分も食事。今日のメニューはご飯と味噌汁、ジュウシマツキメラのからあげ。 06:45 荷物を持って職員室に行く。 07:00 職員室に到着。来るのが早い先生たちに朝のご挨拶。 07:30 続々と先生が職員室にやってくる。自分はドロドロの濃いコーヒーを飲む。 08:00 先生が全員集まった。朝の会議スタート。 08:20 朝の会議終了。幻獣学室に戻る。 08:40 一時間目の授業の準備をする。 08:50 一時間目開始。二年B組の授業だ。 09:40 一時間目が終了するが、面倒になったためドッペルゲンガーにバトンタッチ。 12:40 午前の授業終了まで、準備室で居眠り。 12:50 昼食。食堂に向かう。 13:00 仲良く食事をしている杉崎と蘇芳を発見。声をかける。 13:05 同席を断られたため、一人で寂しく麻婆豆腐を食べる。いーつーもひーとーりでー… 13:25 午後の授業開始。ドッペルを使わずに真面目にやる。 15:15 午後の授業終了。幻獣学室の掃除を当番の生徒と行う。 15:35 授業で使った怪しい薬品がこぼれている。うっかり触った生徒が保健室行きに。 15:40 とりあえず掃除完了。当番の生徒たちが帰っていくのを見送る。 16:00 会議室に向かい、会議に参加する。 18:00 会議終了。購買に寄って幻獣とキメラの餌用に生肉を10キロ分くらい買っていく。 18:30 幻獣学準備室到着。幻獣とキメラたちに買ってきた生肉を与える。 19:00 食堂に晩御飯を食べに行く。 19:20 食堂に到着。蘇芳を見かけ、声を掛けるが無視されてしまう。 19:30 また一人で寂しく肉うどんを食べる。 20:00 幻獣学室に帰り、今日の授業の反省と、明日の授業の準備をする。 20:30 杉崎がやってきたのでお話をする。 21:30 お話終わり。杉崎が部屋から出て行くのを見送る。 22:00 教員用の大浴場にお風呂入りに行く。 22:40 風呂上りにコーヒー牛乳を飲む。やっぱこれだね。 23:00 幻獣学室に帰り、幻獣とキメラを寝かしつける。ポンデキメラが暴れるため麻酔を打つ。 23:30 全部寝たのを確認し、自分も寝る。
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/883.html
その直後、界刺の携帯が鳴り響く。 界刺は、携帯の画面に表示されている電話主を確認し、一息を吐いた後に電話に出る。 「もしもし」 「界刺さん!!今何処にいるんですか!!」 電話主は一厘であった。彼女は大声で界刺に問い掛ける。その声には焦りの色が十二分に含まれていた。 「何処って、公園だよ。この前、君とWデートした時のさ」 「な、何でそんな所に・・・」 「いやね、あのお嬢さんと待ち合わせしていたんだよ。この前貸した俺の服を返してもらうために」 「は、春咲先輩はそこにいるんですか!?」 一厘は一縷の希望を持って界刺に春咲が傍にいるか確認する。だが、 「いんや、いない。どうやら、風紀委員だったことが過激派の救済委員達にバレて、しかもとっ捕まったようだ。さっきメールで連絡が来たよ」 「えっ・・・?」 界刺のあっけらかんとした発言に言葉を失う一厘。 「え~と、なになに。『今から裏切り者の安田改め春咲桜を“制裁”しま~す!何と、彼女は風紀委員だったのです! この裏切りも同然な彼女に私達過激派は断固たる“制裁”を加えようと思います。もし、参加したければ、第6学区の○○まで。』って文面だな。 ご丁寧にとっ捕まったあのお嬢さんの写真付き。全く趣味が悪いねぇ」 「・・・・・・」 「あのお嬢さんが下手を打ったのか、過激派の連中が調べ上げたのか、どっちにしろバレるのが早-な。俺の予想より結構・・・」 「・・・してるんですか?」 「えっ?何?」 界刺の他人事のような口調に、何時の間にか声が低くなる一厘。その声色にははっきりとした憤怒の意思が込められていた。 「そこまでわかってて・・・あなたは一体何をしているんですか!!?何のためにあなたが『そこ』にいるんですか!!?」 「ちょっ!!大声で話すな!耳が遠くなるっつーの!」 「真面目に答えて下さい!!何故あなたは春咲先輩を助けに行かないんです!!? 今こうやって、あなたがボーっとしている間にも春咲先輩が危険な目に合ってるかもしれないんですよ!!?」 「・・・かもな」 「私なら、すぐに春咲先輩を助けに駆け付けます!!なのに、あなたは・・・!!『学園都市の人間を守りに行く』って言った言葉、あれは嘘だったんですか!!?」 一厘の頭の中は、今や界刺に対する憤怒や疑問しかなかった。電話の先にいる男が理解できない。何故平然としていられるのか。 確かに界刺得世という男は変わっていると常々考えていた。だが、ここまでの大馬鹿野郎だったとは、一厘は夢にも思わなかった。 人が危険な目に合っているのにも関わらず、助けようとしない薄情者。今の界刺に対する印象が、まさしくそうだった。 「嘘じゃないよ、リンリン」 なのに、電話の先にいる男の口調には一切の淀みが感じられなかった。まるで、一厘が激怒することを見越していたように。 「ただ、俺にとって学園都市の人間を守るってのは、『シンボル』が・・・正確には真刺の奴が唱えた信念に基づいているってだけの話なんだよ」 「『シンボル』の信念?」 「そう。『高位能力者が責任と自覚を持って学園都市内の人間を守る手本となる』という信念さ」 「だったら、尚更です!!何であなたはその信念に基づいて、春咲先輩を救おうとしないんですか!?」 一厘は、いよいよわけがわからなくなってくる。界刺は『シンボル』の信念に沿って学園都市の人間を守ると言っている。 ならば、何故春咲を救おうとしないのか?『高位能力者が責任と自覚を持って学園都市内の人間を守る手本となる』というのなら、尚更に。 「君は、あのお嬢さんを“今”助けることが正しいと思うのかい?」 だから、界刺の逆質問をすぐには理解できなかった。 「はっ?・・・た、正しいに決まっているじゃないですか!!春咲先輩が危ない目に合っているかもしれないのに、何故それがいけないんですか!?」 「それは風紀委員として?それとも一厘鈴音としてかい?」 「どっちもです!!私自身として!そして、風紀委員として!!『己の信念に従い正しいと感じた行動をとるべし』という私達風紀委員の信念に懸けて!!」 『己の信念に従い正しいと感じた行動をとるべし』。それは風紀委員の心得の1つであり、それ自体がスローガンとなっている在り方。 一厘はこの信念を背負うことに誇りを持っていた。それは、風紀委員一厘鈴音という少女の行動指針にもなっていた。 「『己の信念に従い正しいと感じた行動をとるべし』か・・・。いい言葉だね」 「いい加減はぐらかさないで下さい!!何故あなたは・・・」 「なら、ハッキリ言わせてもらうよ、リンちゃん。君があのお嬢さんを“今”助けに行くことは・・・『正しくない』!!」 「!!!」 界刺は断言する。一厘が一厘鈴音自身として、そして風紀委員として下した“春咲桜を今すぐ助けに行く”という判断が『間違っている』と。 「・・・ど、どういうこと・・・」 「さっきの質問への返答がまだだったね。え~と、『シンボル』の一員として何故助けないのか・・・だったかな。それなら、話は簡単だ。 “今”助けに行ったら、春咲桜という少女に責任と自覚を持たすことができないからだ」 「えっ・・・?」 「まぁ、これは俺の考えだから、君がどうしてもあのお嬢さんをすぐに助けに行くってんなら、俺にはそれを止める権利は無い。 場所は今さっき教えたよね。行きたければ行ってくるといい。行って、助けて・・・その結果として、君があのお嬢さんの『何を』守れるのか・・・楽しみにしているよ。それじゃ」 そうして、界刺は電話を切った。それで話は終わりとでも言わんばかりに。 一厘は、呆然としていた。もう通話が切れているのに携帯を耳元から離さない。 「(わ、私は『間違った』ことなんか言っていない!!『正しいこと』を言った筈!!春咲先輩が危険な目に合うのを黙って見過ごせるわけない!!風紀委員として!!私自身にとっても!!)」 人が危険な目に合っているのに助けないわけがない。そんな光景を見たなら、聞いたなら、知ったなら躊躇無く助ける。それが一厘鈴音という少女の『正しいこと』。 「(な、なのに!!なのに!!!何であの人はあんなことを言うの!?何で『正しくない』って言うの!?何で・・・どうして・・・)」 一厘の頭の中はぐっちゃぐちゃになっていた。そのために、自分がヨロヨロと歩いていたことにも気が付かない。 ズタッ!! ゴンッ!! 「キャッ!!痛~っ・・・」 どこかで躓いたのか転倒してしまい、机の角に頭をぶつけてしまう一厘。ぶつけた痛みが一厘を襲う。 数十秒後、一厘は立ち上がらないまま地べたに座り、背中をぶつけた机にもたれ掛けていた。 「(もう・・・何よ!!何なのよ!!ワケわかんない!!何で私がこんな思いをしないといけないの!?何で“私”をあんな男に否定されないといけないの!?)」 半ば自暴自棄になりかけている一厘。何が『正しく』て、何が『間違っている』のか、その判断が今の彼女にはできない。 「(私は『正しい』!!あの男の方が『間違っている』!!そうよ、今からすぐに春咲先輩を助けに行って・・・私が『正しい』ってことを証明してやる!!)」 一厘はよろめきながらも何とか立ち上がる。今この瞬間にも春咲がケガを負わされているかもしれない。そんな先輩の姿を絶対に見たくない。 一厘はすぐに支部の戸締りに掛かる。数分後、後は消灯し、戸締りをし、支部を出るだけとなった。 「(そうよ・・・そうよ!!あんな男を信じたのがそもそもの間違いだった!!私が最初から春咲先輩に付いていたら、こんなことにはなってなかった!! 見てなさい・・・バカ界刺!!あなたが『間違っている』ってことを・・・私が『正しい』ってことを証明してあげ・・・)」 『行って、助けて・・・その結果として、君があのお嬢さんの『何を』守れるのか・・・楽しみにしているよ』 「!!!」 だが、そんな彼女だからこそ、他人を人一倍気遣う心優しい彼女だからこそ、気が付いてしまった・・・それは矛盾。 『“今”助けに行ったら、春咲桜という少女に責任と自覚を持たすことができないからだ』 本来全く関係無い界刺得世が、自分の生活を削ってまで何のために、それこそ救済委員になってまで何故春咲桜の傍にいたのか。 『風紀委員の皆は・・・優しい。でも、誰1人だって私の本当の気持ちに気が付かない!!気が付いてくれない!! 「大丈夫だよ」って。「レベルなんて関係無い」ってそればかり。大丈夫なわけ無いでしょ!!関係無いわけないでしょ!!! そんな・・・こんな私に気を使ってくれる皆が・・・とてつもなく煩わしかった!!その気配りが・・・私だけが無力だと証明しているかのようで!!』 春咲桜が、何故救済委員になったのか。何故自分達風紀委員に悩みを打ち明けてくれなかったのか。 『(私は「正しい」!!あの男の方が「間違っている」!!そうよ、今からすぐに春咲先輩を助けに行って・・・私が「正しい」ってことを証明してやる!!)』 それなのに、一厘鈴音は自分の『正しさ』を証明するために春咲を助けに行くと心の中で決めた。決めてしまった。 それは、嘘偽りの無い一厘鈴音という少女の本音。春咲桜というレベルの低い少女―弱者―に対して、一厘鈴音というレベルの高い少女―強者―が抱いた・・・差別的な感情。 「ハハハ。・・・ハハハハハハハハハハハッッッッ!!!!!」 自分の心中に潜んでいたその感情を自覚した瞬間、その場に座り込んで高々に笑い声を挙げる一厘。その目には・・・涙が溢れていた。 「ハハハハハッッッ!!!何よ!何なのよ!!この気持ちは!!この感情は!!!」 大声で笑いながら、涙を流しながら、顔をくしゃくしゃにし、手で顔を覆う。 「馬鹿だ!!私は救いようが無い大馬鹿だ!!!何よ・・・春咲先輩のことを真剣に考えていなかったのは、私の方じゃない!!!」 泣き声が混じるその言葉は・・・春咲に対する懺悔か。 「私は自分の『正しさ』を証明するために先輩を助けにいこうとした!!何の言い訳もできない、それが私の本音だった!!! 何でよ・・・何でこんな感情が私の中にあるのよ!!!私は・・・ただ先輩のことが心配だっただけ・・・だけだった筈なのに!!!」 遂には顔を地面につき、うずくまってしまう。 「・・・あの人の言う通り、私が『間違っていた』!!私は『正しくなかった』!!!こんな、こんな私に春咲先輩を救う資格なんて無い!!!私は・・・私は風紀委員失格だ・・・!!!」 『己の信念に従い正しいと感じた行動をとるべし』。それが、一厘鈴音の支えだった。その支えが今、脆く崩れようとしていた。 「こんな、こんなものを!!風紀委員の腕章なんて!!私に付ける資格は無い!!!・・・・・・こ・・・こん・・・こんなもの!!!」 自分の腕に付けていた風紀委員の腕章を乱暴に掴み、それを引き千切ろうとする一厘。彼女はいよいよもって、引き返せない地点にまでその足を進めようとしていた。 ピロロロロロロロ~ その間際に鳴り響く一厘の携帯電話。その着信音に気付いた一厘は、今まさに引き千切ろうとしていた腕章から手を離し、震える手で電話主を確認する。 そして、携帯の画面に表示された名前に瞠目し・・・3度の息を吐いた後、ようやく電話に出る。 「・・・・・・もしもし」 「あ。リンリン?まだ支部に残ってる?」 飄々としたその声の主は―界刺。 「・・・・・・何よ」 「いやね。ちょっと調べモンをして欲しいっていうか、ある場所の地図をメールして欲しいと思って。 その感じだと、まだ支部を飛び出ていないようだね。よかった、よかった」 先程の剣呑とした応酬など忘れてしまっているのか、その口調は何時もの彼そのものであった。 そんな界刺に、一厘は涙声になりながらも言葉を告げる。 「・・・あのね」 「うん?」 「あなたの言う通り、私は『間違っていた』。私は・・・自分の『正しさ』を証明するために春咲先輩を助けようとしていた」 「・・・」 「全然春咲先輩のためじゃ無かった。私は心の何処かで思っていた。“弱い”春咲先輩を“強い”私が守ってあげないと。支えてあげないとって。 でも、違った。本当は・・・先輩を見下していたんだ。先輩のために気を使っていたんじゃない。自分のために先輩を気遣っていたんだ!!」 「・・・・」 「ホント、こんな私がよく先輩を助けようって言えたもんだよね。心の底では自分より弱い人って見下していたのにね!!ホント・・・・・・私って最低だ」 一厘の懺悔の言葉は止まらない。それだけ、己が自覚した感情が衝撃だったのか。 その瞳から流れ落ちる涙は、一向に止む気配は無い。 「だから・・・私は先輩の所に行けない。助けに行く資格なんて無い!風紀委員である資格なんて無い!!だって・・・私は、こんなにも醜い人間なんだもの・・・!!!」 慟哭。もう、そうとしか形容ができない程一厘は悲鳴を挙げていた。 完全なる自己否定。今までの自分を形作ってきたものの崩壊。 このままでは、彼女は・・・ 「へ~、色々思い詰めてたんだね~。んふっ。ところでさ、さっきの地図の件を早くお願いしたいんだけど」 「・・・・・・へっ?」 全く・・・鈍感と言うべきか、肝が据わっていると言うべきか、界刺は事ここに至っても平然と己の依頼を口にしていた。何時もの胡散臭い笑い声付きで。 「だ・か・ら、さっき調べて欲しいっつった地図のメールの件だよ!全くこれだからリンリンは・・・」 「・・・あっ。ちょ、ちょっと待って下さい。今パソコンを再起動しますから」 「再起動?ってことは、本当に飛び出る寸前だったのか。ヒュ~、危ねぇ」 涙で目を腫らしながらも、界刺の依頼のためにパソコンを再起動する一厘。彼の役に立つことが、せめてもの償い。そう考えているのかもしれない。 「あ、そうだ。パソコンが立ち上がる前まで、ちょっとお話しようか、リンちゃん」 「・・・話・・・ですか?」 「うん。まどろっこしいのは抜きでいくよ。君の懺悔なんか、俺にとってはどうでもいい」 「!!!」 界刺の口から零れたのは・・・懺悔の否定。 「そんなことは俺にじゃ無く、あのお嬢さんに言うべきだろ。俺は君の下僕でも何でも無いんだから。そこんトコ、履き違えないでくれる?」 「・・・ご、ごめんなさい」 一厘は先の醜態を謝罪する。自分でも抑えられなかったあの懺悔に、界刺を巻き込んでしまった。それは、一厘の心を重くする。 「わかってくれたんならいいよ。それと・・・これは確認事項なんだけど」 「・・・何ですか?」 まだ、パソコンの再起動までには至らない。それに多少イラつきながら一厘は界刺の言葉を待つ。 「君はさ、あのお嬢さんを助けたくないの?」 「!!!!」 その一言は・・・一厘の胸を真正面から貫いた。 「わ・・・私には、そんな資格なんてありません!!こんな私に・・・。それに、あなただって言ったじゃないですか。“今”は先輩を助けないって!!」 「うん、言った。但し“今”はね。その後は話が別だ」 界刺は一厘の心の奥底を抉り取る。 「今回お嬢さんの身に降り掛かった火の粉は・・・言ってしまえば自業自得だ。 風紀委員と救済委員の掛け持ちをするのなら、いずれこうなることは目に見えていた。あのお嬢さんは、そのツケを現在進行中で払っているだけの話さ」 「・・・」 「現在進行中、つまり“今”お嬢さんを助けに行ったら、今までの俺の努力が全て水の泡になる。 これは、彼女の問題だ。彼女自身で解決しなきゃならないことだ。たとえ、どんな結果になろうとも。 なのに、誰かが助けたら・・・それこそあのお嬢さんは今度こそ悟るだろう。『自分が無力』だってな。それじゃあ・・・話にならない。 春咲桜に必要なのは・・・“救いの手”なんかじゃ無い。“自分で立ち上がる足”だ!!」 「!!!・・・“自分で立ち上がる足”?」 一厘の心に界刺の言葉が広がっていく。それは容赦の無い・・・温かな『何か』。 「そう。それが自分の行動に責任と自覚を持つってことだ。俺は守られる側にもそれを求める。でないと、不公平だからね。 だから、俺達に精々できるのは彼女が自分の足で立てるように補助してやるくらいだ。 だから、俺は救済委員として、そして俺自身の意思であのお嬢さんを補助していたんだ」 「でも・・・私には・・・そんな資格が・・・」 「・・・ったくメンドくさい奴だなあ、君は。助ける資格?風紀委員失格?んなことはどうでもいいんだよ! 確かに君はあのお嬢さんを知らず知らずの内に差別していたのかもしれない。自分のために利用していたのかもしれない。 だが、それがどうしたってんだ!!あのお嬢さんを救う理由にそんな付属品が必要なのかよ! これが最後の質問だ。5秒以内に答えろ!・・・お前は、春咲桜を救いたくはねぇのか!?答えろ、一厘鈴音!!」 “これが最後”。そう断言した界刺の問いに、一厘鈴音は・・・ 「た・・・助けたい。助けたい!!先輩を、春咲先輩を救いたい!!!」 その瞳から再び涙が零れ落ちる。顔をくしゃくしゃにしながらも、涙声に喉を詰まらせながらも、一厘は答えを放つ。これもまた・・・嘘偽りの無い一厘鈴音という少女の本音。 「・・・わかった。なら、俺の依頼が終わった後に、俺が居る公園へ来い。場所は言わなくてもわかってんだろ」 「えっ?」 「今はその付属品・・・助ける資格とか、風紀委員失格とか、そいつ等の判断は保留にしときなよ。 その判断を下すのは・・・今回のことが全部終わってからでも遅くはない」 「・・・」 「そういえば全然気にしていなかったけど、他の風紀委員は支部にいないの?何かその様子だと、君1人みたいだね」 「・・・色々あって、今は私1人です。ただ・・・」 「ただ?」 「鉄枷が誰かからの電話を受けて・・・飛び出して行っちゃったんです。『春咲先輩が・・・』って言葉は聞きました。鉄枷の顔が瞬く間に青ざめていくのも」 「・・・成程。よりにもよってお嬢さんが所属する支部に連絡して、お嬢さんを完膚なきまでに叩き潰すつもりだな。下手したら、他の支部にも連絡が回ってるかも」 「そ、そんな!それじゃあ春咲先輩は・・・」 「今はそんな後処理についてどうこう言っても仕方無ぇよ。・・・なるようにしかならないと思うぜ」 そう言葉を交わしている中、ようやくパソコンが再起動した。それを確認した一厘は、界刺が求めた地図の情報を調べにパソコンに向かい合ったのである。 そして10分後、界刺の依頼通りに所定の地図をメールし終えた一厘は、今度こそ支部を後にするために、戸締りの準備に入る。 「そうやって、公園(そこ)に留まっているということは、何らかの作戦みたいなものがあるってことですよね」 「まぁね。こんな事態もおおよそ想定していたし。規模が予想以上にデカいのが不安要素だが。後はお嬢さん次第だな。もし、“リタイア”しちまったら・・・それもしゃーねーよ」 「っっ・・・!!」 「人はいつか死ぬもんさ。それが早いか遅いか、それだけの違いだ。まぁ、自分から死にに行く奴にはなりたくないけど。 リンリン・・・悪いが俺はこういう人間だ。今までも、これからも・・・な。あのお嬢さんが意地を見せるってんなら、力を貸してやる。こんな俺でも・・・君はいいのかい?」 「・・・今の私には、あなたが『正しい』のか『間違っている』のかの判断は下せません。だから・・・今はあなたと共に行きます。 もし、春咲先輩があなたの言う“リタイア”になったら・・・その時は私もその咎を負い・・・」 「それがいけないんだよ、リンちゃん。それはそれ。これはこれ。あのお嬢さんの問題と君の問題を混合するな。 そんなことに囚われてちゃあ、本当に大事な時に間違った一歩を選択しちまうぜ?囚われるな・・・見誤るな・・・見極めろ・・・掴み取れ・・・!!」 『界刺は・・・容赦しないよ』 「(本当にこの人は・・・)」 一厘は今更ながら形製が自分へ放った忠告の真意を理解する。全くもって界刺は容赦しない。平然と自分の心をかき乱す。抉り取る。蹂躙する。 だが、だからこそ一厘は己の醜さに気付けたのかもしれない。己の感情と向かい合うことができたのかもしれない。 だから、一厘鈴音は界刺得世と共に行くと決めた。その判断に―何が『正しい』のか、何が『間違っている』のかわからない一厘が下した―後悔は・・・無い。 「・・・よし。戸締り完了。これからすぐにそちらに向かいます!!」 「あいよ。・・・本当はこんなことになる前に何とかしたかったが、仕方無ぇ。改めて何とかするしかねぇか」 支部を出る一厘。その足は駆け足。その足で風輪学園の校門をもうすぐ越える。 「リンリン!!」 「はい!!」 そんな彼女に界刺が声を掛ける。それは、あの公園で既に言ったこと。 「君の力を借りなきゃいけなくなったけど・・・準備はいいかい?」 それは、界刺なりの気遣いの言葉。“一厘が春咲を救う作戦に参加してもいい”。界刺は一厘にそう言っているのだ。 「もちろん、私だけじゃ無いですよね!?」 一厘はその言葉に含まれる真意を汲み取り、その上で・・・もう一度だけ界刺に甘える。 「そりゃそうだ。俺やリンちゃんだけでできることなんてたかが知れている。 これもお嬢さん次第だけど・・・もちろん、他の奴等にも協力してもらうつもりだよ。俺やリンリンにはできないことを・・・ね」 それに応える界刺。一厘は思う。これが人を信じるということなのか・・・と。これが人を信頼するということなのか・・・と。 そして、きっと界刺は信じている。信頼している。春咲が意地を見せることを。でなければ、「協力」なんて言葉は・・・きっとあの人の口からは出て来ない。 それがわかったから・・・一厘は叫ぶ。それ―自分に欠けていたモノ―を教えてくれた界刺に、今できる精一杯の感謝を込めて叫ぶ。 「わかりました!!春咲先輩を救えるならこの一厘鈴音の命、あなたに預けますよ!!!」 continue!!
https://w.atwiki.jp/398san/pages/1202.html
《フォーチュンチャリオット》 効果モンスター 星4/光属性/天使族/攻 1000/守 1000 1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに装備カード扱いとして自分の「ワルキューレ」と名のついたモンスターに装備、 または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。 この効果で装備カード扱いになっている時のみ、装備モンスターの元々の攻撃力をエンドフェイズまで半分にする事で、 装備モンスターはこのターン相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。 (1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。 装備モンスターが戦闘で破壊される場合は、代わりにこのカードを破壊する。) 光属性・天使族であるユニオンの下級モンスター。 1ターンに1度だけ装備カード扱いでワルキューレと名のついたモンスターに装備、またはその装備を解除することができる効果を持つ。このカードが装備されているモンスターはもともとの攻撃力を半分にして、相手に直接攻撃できるようになる。 リクルーターで引っ張ってくることができる。 このカードで得られる直接攻撃能力はエンドフェイズまでもともとの攻撃力がダウンするとはいえ、なかなか優秀。相手の場に戦闘破壊できなモンスターがいる時や、攻撃したくないモンスターがいる時に使おう。 発動時メッセージ「ワルキューレ・ブリュンヒルデは運命の守護を受けた!」 関連カード ワルキューレ
https://w.atwiki.jp/gununu/pages/535.html
とある魔術の禁書目録 作品情報 公式HP http //www.project-index.net/ 24枚 上条当麻 インデックス 御坂美琴 ステイル=マグヌス 白井黒子 神裂火織 月詠小萌 アウレオルス=イザード 姫神秋沙 アクセラレータ 土御門元春 土御門舞夏 風斬氷華 青髪ピアス ラストオーダー ラストオーダー(ぃえーい) 御坂妹a 御坂妹b 御坂妹c ミーシャ=クロイツェフ ミーシャ=クロイツェフ(目隠れ) とある魔術の禁書目録Ⅱ オリアナ=トムソン 吹寄制理 アンジェレネ
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/851.html
それは、暗夜に浮かぶ1つの光。 「俺を包むこの『暗黒時空』。これは何人たりとも防ぐことは叶わぬもの(という設定)」 それは、闇夜に浮かぶ1本の光線。 「だが、足りぬ。この力だけでは虐げられている者達を救うにはまだ遠い(という設定)」 それは、暗闇に浮かぶ幾つもの光線。 「故に俺は欲した。『暗黒時空』に匹敵する力を!そして・・・遂に手に入れた!(という設定)」 それは、漆黒に浮かぶ何人もの光。 「さぁ、その目に焼き付けよ!!俺の、いや、俺達の『閃天動地(ライトニングブレイク)』を!!(という設定)」 どこかからリズムの良い音楽が流れてくる。それに伴ってブレイクダンス(自称)をする光を纏う人間達。 「さすが啄先輩!!自分、頑張ったかいがありました!!」 「何を言う刺界!!お前の力が無ければこの『閃天動地』は完成しなかったのだ。大いに誇るがいい」 「ありがとうございます!!」 「いい後輩ができたな、鴉よぉ。こりゃあ、彼を十二人委員会に加えてやってもいいんじゃないか?」 「拙者もその意見に賛成だ!師匠、拙者からもお願い申し上げます」 「うむ。俺は一向に構わんぞ。どうだ、刺界?我が十二人委員会の一員としてその力を振るってみないか?」 「自分のような若輩者に何という有難きお言葉。もし許されるなら、自分、精一杯努めさせて頂きます!!」 「そうか!!よし、皆の者!!新たな仲間が我が十二人委員会へ加入した!!さあ、宴だ!!今日は力の続く限り踊りまくるぞ」 「「「おおおおお!!!!」」」 「・・・・・・何ですか、あれ」 「・・・・・・えーと」 「・・・・・・適当に見て見ぬ振りをしていればいいってね」 最近救済委員に加入した安田もとい春咲は、眼前で繰り広げられている意味不明な踊りについて先輩に助言を求めたが、 その先輩達―花多狩と農条―も何やら口をごもらせていた。 「あの黒いコートの方がさっきから言ってる十二人委員会って何ですか?」 「・・・・・・うーんと」 「・・・・・・適当に聞き流していればいいってね。妄想世界の住人の言葉は現実世界の俺達には意味不明ってね」 黒いコートを羽織る男―啄鴉―は何を隠そう妄想に生きる男である。彼にとって妄想が全て、妄想世界の原理が彼の行動原理である。 「『閃天動地』って何のことですか?」 「・・・・・・えー、あー」 「・・・・・・どうやら刺界が持ってきた電飾を仕込んだスーツのことらしい。イルミネーションダンスって言うらしいってね」 「花多狩さん。さっきから唸ってばかりですよ」 「・・・ごめんなさい、安田さん。この光景・・・私の理解力を超えているみたい」 「・・・確かに」 さっきから深夜という時間帯にも関わらず色んな電飾を光らせて踊りみたいな動作をしている啄、仲場、ゲコ太マスク、刺界もとい界刺の4人。 一般人が見たらまず間違いなく変質者と誤解される彼等の容貌や動作は、れっきとしたダンスの1形式である。 事の発端は、以前のファーストコンタクトの際に姿を見せなかった啄が2日前に現れたことだ。 その折に、啄と界刺が意気投合してしまったのである。両者が同じ光学系能力者であったことも関係あるかもしれない。 そして今日、界刺は電飾が仕込まれたスーツを持ってきたのである。彼のコレクションらしいそれは、一見すると奇妙な服であった。 しかし、啄はそれをいたく気に入り、彼の言う所の『暗黒時空』に代わる新能力を見出すために救済委員活動をほったらかしにして今に至るのだ。 ちなみに春咲と同じくガスマスクに覆われた界刺も顔には見せないが(見えない)どこか満足そうな雰囲気を醸し出していた。 「今日の救済委員活動、安田さんのデビュー戦だったのにこれじゃあ無理そうだわ」 「確かに。こいつ等をほったらかしにしてたら後々俺達にもしわ寄せがあるかも」 「・・・というか意外でした。私、てっきり救済委員って単独活動とばかり」 「昔はね。まあ、今も単独でやる奴はいるけど・・・。ようは効率重視ってね」 「それもあるけど・・・やっぱり誰しも1人というのは不安なのよね。だから、こうやって連帯するのかも」 「・・・そうですか」 「思う存分暴れられなくて不満?」 「いえ!そんなことは」 花多狩の少し意地悪な質問を否定する春咲。不満なんかあるわけない。本音では・・・ホッとしているのだ。だって自分は・・・。 『ふ~ん、そっか。多分だけど・・・死ぬよ、君?』 「(!!な、何をホッとしているのよ、私!こんなことでホッとしていたら、何のためにここにいるのかわからなくなるじゃない!!)」 ふと界刺が言った言葉を思い出し、心の中で活を入れる春咲。風紀委員の仲間達を欺いてまで救済委員に入ったのはどうしてか。 それは、自分の力を証明するためである。自分が強いことを証明するためである。 決して弱さを認めるためでは無い。決して他人を頼るためでは無い。決して。 「はい、コレ。あなたのケータイ」 「へっ!?」 「ボーっとしないの。これは連絡用のケータイよ。自前のケータイだと色々不都合でしょ? 言っておくけど、毎月の使用分はちゃんと払ってもらうわよ?」 「は、はい」 「これは落としちゃダメだからね。風紀委員や警備員に拾われたら面倒だから。それと・・・そいつ等に仲間の情報を売るのは絶対にダメよ。無いとは思うけど」 「そうそう。アシが付くのは勘弁ってね」 「・・・わかりました」 花多狩の忠告を受け、春咲は再び思考に身を委ねる。何故なら自分は現役の風紀委員なのだから。 もちろん、売ったりなんかするつもりは無い。他ならぬ自分のために。 『だからさ、君の仲間へチクるのもやめとくよ』 「(私は・・・あの時どう思ったんだろう?支部の仲間に知られなくてホッとしたのかな?それとも・・・)」 そして思い出す。界刺のあの言葉を。 自分の仲間にバラすと言い、バラすのをやめたと言い、何故か自分と同じく救済委員に入った目の前の男が放った言葉を。 「(知られて・・・殴られて・・・説得されて・・・止めて欲しかったのかな?)」 continue!!
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/766.html
とある超能力者の憂鬱 という夢を見た。 夢だったら良かったのだが、いつまでも現実逃避をしていたらかがみに笑われてしまう。 そう、現実なのだ。 ついさっきカオスロワ法案が通って、開始を言い渡された。 また、殺し合い。 だけどそれは自分が望んだ事だ。 今度こそかがみも、みなみも、ひよこっこも、>>やおいも、みんなで生き残りたい。 693やあやの、俺たちを誤解したみんなもできれば救いたい。 だから待っていてくれ、みんな。 俺が今度こそ惨劇を回避してみせる! 【一日目・12 01/東京都実家】 【◆6/WWxs9O1s@カオスロワ4th】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:支給品一式 [思考]基本:みんなを救いたい(4thで関わりがあった人は特に)
https://w.atwiki.jp/yuiui/pages/17.html
28 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2009/09/13(日) 01 55 18 ID 4tr7gLjF とある夜の出来事 憂(さて、寝ようかな…あ、寝る前にお姉ちゃんに貸したペン返してもらわなきゃ) カチャ 憂「お姉ちゃんもう寝た?ちょっと入るね」 唯「うぅ…ん…」 憂「あ、ペン枕元に置いて…しょうがないなあ」 唯「うーん…ういぃ…」 憂「きゃっ…お姉ちゃん?ちょっと苦しいよ…」 唯「うい…行っちゃやだよぉ…うう…ういー…」 憂「お姉ちゃん?…大丈夫だよ、私はここにいるよ?」 唯「う…憂…ごめん、私…」 憂「大丈夫?なんだかうなされてたよ?」 唯「怖い夢見たの…憂が私を置いて遠くに行っちゃう夢… もう二度と会えないかと思って、私…うぅ…ズズー」 憂「とりあえず鼻かもうね?もう、私がお姉ちゃんを置いて行くわけないじゃない」 唯「うん…ねえ憂、今日は一緒に寝てくれる?」 憂「うん、いいよ?」 唯「ホント?ありがと憂、だいすき!」 憂「私も…大好きだよ」 唯「えへへ…両思いだね」 憂「だね…さ、風邪ひかないようにくっついて寝ようか」 唯「うん♪おやすみー」 憂「おやすみ、お姉ちゃん♪」 憂(大好きって言ってくれてありがとうお姉ちゃん…これからもずっと一緒だからね)